[鍋、ぶらり。]第拾四幕・終編:ニッポン全国鍋グランプリの歴史とイベントに関わる人たちについて考えてみた。
2回にわたってレポートした鍋、ぶらり。ニッポン全国鍋グランプリ2017編はいかがでしたでしょうか?
- [鍋、ぶらり。]第拾四幕・前編:今年も開催!ニッポン全国鍋グランプリ2017〜“もちぶた炙りチャーシューバージョン豚汁”が2年ぶりに金の鍋に返り咲き!
- [鍋、ぶらり。]第拾四幕・後編:ニッポン全国鍋グランプリ2017レポート!
鍋の投票結果や鍋、つつこ。メンバーでつついた鍋についてはこちらの記事もあわせてご覧くださいね。
行ってみたいなーと思った方がいたら、来年ぜひ鍋、つつこ。メンバーと一緒に行きましょう! 例年通りであれば、1月の最終週の土日開催です(笑)。
さてさて、そんな埼玉県和光市の冬の風物詩となったこのイベント、今年はなんと約14万7千人を集めた(実行委員会調べ)そう。
年末にテレビでよく取り上げられていた日比谷公園の「第3回ご当地鍋フェスティバル」が第2回の約12万人から約17万人に大幅に動員数を増やしたそうですが、都心のど真ん中で金・土・日の3日間開催に対して、東京都に隣接しているとはいえ人口8万人程度のそれほど大きくない都市で2日間の開催ですから、この集客力には驚きです。
ニッポン全国鍋グランプリの歴史
ちなみにこの「ニッポン全国鍋グランプリ」ですが、実は何回かイベント名称が変わり今に至っています。そしてそれとあわせるようにして開催趣旨も変わっていったようです(もちろん良い方向に)。
彩の国鍋合戦(第6回まで)
彩の国鍋合戦とは?:冬の風物詩である「鍋」をテーマに、古今東西(全世界)の食材を活用した有名無名の鍋料理、我が家の自慢の鍋料理、創作の鍋料理を一堂に会します。来場者の投票により、その年の「鍋奉行」を選出し表彰。日本最大級の「鍋料理コンテスト」をめざし、平成17年より毎年この時期に和光市商工会が全力で取り組んでいるイベントです。
ニッポン全国鍋合戦(第10回まで)
本委員会では、ご当地食材活用の地産地消促進、名物料理づくりでの地域活性化、団体や学校の話題づくりなどで鍋料理を介する活動を「鍋文化」と称して推進しています。鍋文化の対決による「ニッポン全国鍋合戦」を開催し、日本の食文化の普及や元気な地域づくりを推進することを目的に事業を行います。
過去の開催要項より
ニッポン全国鍋グランプリ(第11回目となる2015年から現在に至る)
ここからそれまでの第○回という表記から年号を冠するかたちに変わります。
本会では、ご当地食材活用の地産地消促進、名物鍋づくりでの 地域活性化、団体や学校の話題づくりなどの鍋料理を介する活 動を「鍋文化」と称して推進しています。日本の食文化の普及や地域おこしを応援することを目的として 鍋文化の対決による鍋料理コンテスト「ニッポン全国鍋グランプリ 2015」を開催します。全国に1000種類以上あるとも言われている鍋料理を一堂に 会し、「ご当地鍋日本一決定戦!」を競う日本最大級の鍋料理 コンテストとして開催いたします。
そして、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピック において、世界に向け「日本の鍋:和食」を発信します!
一般社団法人ニッポン全国鍋協会を設立し、従前の開催組織を側面的に 支援するオフィシャル機関を加え、全国的な運営を展開いたします。
プレスリリースより http://www.wako-sci.or.jp/nabe2/pdf/press_release2015.pdf
回を重ねるにつれて、名称が変わるにつれて、イベントが昇華していっているのが開催趣旨からもわかります。最初のころの【日本最大級の「鍋料理コンテスト」をめざし】については、実際にもうそのようになっています。
この有言実行、素晴らしいですね。
始まりの回である第1回の様子がどんなだったかというのは過去の記録が市や商工会のウェブサイトにもないのでわからないのですが、第7回ニッポン全国鍋合戦(彩の国鍋合戦)開催要綱の参加資格を見ると、
- 商工会・商工会議所会員
- 商工会・商工会議所の推薦する団体
- 地域振興寄与を目的に参加し、和光市商工会が相応しいと認めた団体
とあり、また、第6回の結果表でも、日曜の単日開催で参加者40,000人、出店者も和光市や近接地域からが主であるなど、やはりこの「彩の国鍋合戦」の時代は地域の町おこしの色あいが強かったんだろうなと思います。
イベント名も初期は埼玉県の相性である「彩の国」を使い、その次のイベント名から「ニッポン」の名称を冠したことを見てもそれがわかります。
このイベントが生まれた経緯については、プレスリリースで以下のように書かれています。
<鍋合戦誕生の経緯>
「鍋を囲む」「鍋をつつく」といった言葉の先には、身も心も暖まる笑顔のコミュニケーションの場面が浮かびます。
鍋という題材には、全国各地や世界各国の様々な文化が存在し、気候風土に育まれた豊かなエッセンスがふんだんに盛り込まれております。地域ならではの食材で作る鍋料理は、まさに「ソウルフード」であり、地域ブランドでもあります。
和光市は、東京都(板橋区・練馬区)に隣接する人口約8万人のベッドタウンで、東武東上線、東京メトロ有楽町線・副都心線の始発駅として、人口増加の一途を辿っております。
そのような状況下、市外からの移転者が大半を占めるようになり、必然的にそれぞれの出身地の話題や自慢話が飛び交い始めました。
その中で、地域それぞれの「鍋料理」が話題になり、ケンカさながらの自慢大会となってしまいました。(郷土愛のバトル勃発!)そこで、「ならばお互いにどっちが旨いか対決しよう!」との話の先に「鍋合戦」が誕生したのです!
ベッドタウンならではのローカル自慢から端を発したイベントになりましたが、第1回開催での参加鍋数は16から始まり、回を重ねるごとに鍋自慢が増え、現在では60鍋の参戦による対決が繰り広げらています。
また、全国各地からの参戦も増え、和光市の冬の風物詩・日本最大級の鍋料理コンテストとしてにぎわっております。そして、2015年から「ニッポン全国鍋グランプリ」に改称し、全国各地よりの名物鍋による「ご当地鍋日本一決定戦!」として、日本の鍋文化を世界に向けて発信することになりました。(日本の鍋=和食)全国各地の「鍋による街の顔づくり」を精力的に応援してまいります。
同プレスリリースより
こちらに書いてあるような話ももちろん実際にあったのでしょう。
が、やはり最初はおそらく和光市という地域の活性化や住民サービスの一環として始まったのだと思います。
それを裏付けるように、先のプレスリリースの<和光流「鍋の定義」>の中では以下のように記載されています。
本会では、「鍋=コミュニケーション」と位置づけ、円満な家庭・職場・地域づくりのアイテムとして活用いただくことを推奨します。
また、災害時の炊き出し訓練の一環として、さらには地産地消や地域づくり・街おこしの一環として「鍋」の活用を推進してまいります。
さらには、「鍋=和食」として、鍋文化を世界に発信してまいります!
同プレスリリースより
行政区画の最下層には最小の行政単位である住民自治組織、いわゆる自治体があって、それごとに夏祭りや餅つき大会などよくあるこじんまりイベントがあるものの、おそらく市としてもっと住民同士の繋がりを深める何か、住民自身が誇りをもてる何かを持てるように、そしてそれを行う過程や結果として、行政としての実利を得られるようにと、そんな思惑から始まったのでは? ということがこの経緯から感じられます。
いずれにしても、そうやってイベントを積み重ねていった正常な進化の結果として規模も拡大し、
- 地方のいちイベントから、日本全国の食文化を担う作り手の発表の場を提供する場へ
- 日本の食文化としての鍋を発信し、東京オリンピックという一大イベントを利用した海外発信を視野に入れる
- 一方で住民不在のよくある商業イベントではなく、地元で伝統文化を扱う団体や子どもたちの活動発表の場としても利用
このようにイベントが進化してきたのだと思います。結果、冒頭に述べたような動員数を得るまでになったのでしょう。
イベントを支える人たち
一方で、動員数が増えればそれだけ考えなくてはいけないことや対応すべきことが増えます。
イベント運営というのは考えるよりもずっと大変なものです。
参加者の満足は綿密なイベント設計とリスクマネジメント、それに加えて現場の対応力によって初めて得られるものです。
これらのどれか一つが欠けたらそれはもちろんダメですし、それらを構成するとても小さな要素が欠けてもいいイベントにはなりません。
例えばサッと普通に考えるだけでも、出店者に対する告知や機材資材の準備のような当たり前のことはもちろん、遠方から来ている団体向けに宿泊場所の情報提供の必要に迫られることもあるでしょう。
思いもよらないこと、不確実な事柄の備えも必要です。
- 雨が降ったら?
- 大きな地震などが起こったら?
- 火事が発生したら?
- 急病人がでた場合は?
- 参加者間でのトラブルが起こったら?
- 通り魔のような不審者が乱入したら?
- 子ども連れが多いので、迷子がでたときの対応は?
などなど。
もちろんイベント後始末への配慮も大切です。
例えば大量のゴミをどう処分する? など。
このあたりは昨今のエコロジー指向で、このイベントに限らず食品を扱うイベントではさまざまな趣向が凝らされていますが、ニッポン全国鍋グランプリの場合、リサイクル可能な食器を投票券と取り替えるスタイル。
参加者投票制のイベントにあって投票券は参加するために必須ですから、ゴミ回収と結びつけたのは大変いいアイデアだと思います。
また当然のことですが、実行するためには人手が必要です。事実このイベントでもたくさんの裏方さんを目にしました。
- 周辺の交通整理をしている人
- 来場者にパンフレットを配る人
- 会場警備をしている人
- イベントステージで進行表を片手に取り仕切る人や司会進行をする人
- 投票所付近で空き容器と引き替えに投票券を配っている人
- 市庁舎内の参加者からは見えない場所で運営サポートをしている人もおそらくたくさんいるはず
ちなみにこの投票券担当のスタッフは、twitterで関係者らしき人がツイートしていてわかったのですが、地元の和光高校の生徒たちだったようです。
こうやって高校生が休日にもかかわらず裏方として協力しているあたり、地元として誇りを持てるイベントになっているんだろうと推測します。
部活動に関係するようなイベントではないですし、強制力だけではなかなかこういった協力は取り付けにくいものだからです。
来年もまた、感謝とともに
こういった大規模イベントの精度を上げるためには、経験や方法論はもちろん必要です。 が、それ以上に必要なのは熱意。
事実、PRに力を入れている割に運営がお粗末なイベントも多数見てきました。そういったイベントに対しては次回また足を運ぼうという気になかなかならないものです。
今では日本でも最大規模のイベントになったこの一大鍋イベント。
家族連れで電車に乗って休日に足を運ぼうと思わせるようなイベント。
鍋、つつこ。4年目にして3回の来訪となるこの思い入れのある楽しいイベント。
こういうイベントを成功させようという熱い熱意、鍋よりも熱い熱意を持った人たちによってこのイベントが運営され、その尽力のおかげで、いち参加者として楽しむことができたということに素直に感謝したいと思いました。
運営者の皆さん、お疲れさまでした。
また来年も行きますのでよろしくお願いいたします!
(文責・大崎)