昔の春、今の春
6月、全国各地で梅雨入りしています。
今年は例年よりも雨が少ないようですが、この時期の雨は恵みの雨。夏に向けて大切な季節です。そして、梅雨の終わりとともに春の終わりが告げられます。
今は春というと、4~6月を指すことが多いですが、陰暦を使っていた昔は1~3月を「三春」と呼んで春を指していたようです。その、昔の春の旬のものの1つが「はまぐり」。あの、整った、それでいて1つとして同じ組み合わせのない貝殻と、その中にはぷりっぷりの身が入っていて、焼いても煮ても美味しい食材です。このはまぐりの産地として有名なのが、先月末、世界各国の首脳が集まって行われたサミット会場となった伊勢。中でも伊勢桑名のはまぐりはその大きさ、身の付き方から多くの方に好まれ、食べられています。
前置きが長くなりました。東京でこの伊勢桑名のはまぐりを食べられるお店、それが今回ご紹介する有楽町ビル地下1階にある「伊勢桑名 貝縁」さんです。
はまぐり料理ばかりなり
こちらの店はとにかくはまぐり料理がいっぱいあるんです。このキッチンの向こうで、さまざまなはまぐり料理をつくってくれます。もちろん、はまぐり以外の料理も 🙂
今回のお目当てはこちら。
どーん!
そう、はまぐり。「はまぐりのしゃぶしゃぶ」です。
鍋はこちら。うっすらと下味のついた出汁スープ。
シンプルにこれだけです。はまぐり、鍋、出汁スープ。
あとは火を着けてはまぐりを煮るだけ。
貝が開いたら食べごろです。
はまぐりのみ。ただひたすらにはまぐりを貪る。贅沢。
このぷりっぷりの身の食感、そして、味が最高。
食後には貝殻のみが残ります。
〆の雑炊がまた絶品
〆はもちろんこの出汁を活かして雑炊を。あまりに美味しすぎて全然写真を撮らなかったんですがw、本当に美味かったです。はまぐりって、なんでこんなに有能なんでしょうか。
その手は桑名の焼きはまぐり!
そうそう。桑名のはまぐりと言えば、このことわざが有名です。
その手は桑名の焼きはまぐり。
この意味は「うまいこと言ってもだまされない。その手は食わない」という、「桑名(くわな)」という地名と「食わない」の語感を掛けた洒落によることわざです。
でも、食いました。焼きはまぐりも。
こちらでは大きさを3つ用意してくれて、大きさによる味と食感の違いが楽しめます。こういう遊び心がまた良いですね。
古くから日本に馴染みのある、はまぐり
今回は最初から最後まではまぐり尽くしでした。いかがですか?
このはまぐり、古くは縄文時代から日本に馴染みのあるもので、食材としてはもちろん、道具として利用されてきました。また、『日本書紀』にも記述があるなど、日本という土地に根付いていた貝です。先ほどのことわざだけではなく、ほかにも「貝合わせ」といった平安時代の遊びで使われたり、碁石の素材として利用されるなど、その用途は多岐にわたります。一方で、日本産のはまぐりは野生絶滅とのこと(千葉県レッドデータブック)。現在はチョウセンハマグリやシナハマグリ、ホンビノスといった外来種の流通が多いようです(ホンビノスについては「[コソ鍋・佰玖拾壱]神奈川・横須賀・相模湾で獲れた食材から閃いた~鍋、つつこ。オリジナル:ホンビノスのクラムチャウダー鍋」もご覧ください)。
時代とともに、その存在感が変化する、そして、ずっと日本に馴染みのあるはまぐり。食材を深掘りして日本の歴史・文化を知りながら、鍋を楽しむのもまた一興ですね。
日本の歴史と文化を学びながら、鍋、つつこ。
(文責・馮)
今回つついた鍋
種類: | はまぐりしゃぶしゃぶ |
店名: | 伊勢桑名 貝縁(東京・有楽町) |
URL: | http://r.gnavi.co.jp/gb46018/ |