無印良品のコラム
春ですね。桜の樹はすっかり新緑の装いになり、街を歩くにはピッタリの季節。こんな季節に合う鍋ってなんだろう?と思いながら歩いているうちに、そう言えば、鍋そのものの歴史についてきちんと考えたことはなかったのでここで改めて調べてみることにしてみました。 きっかけとなったのはこのブログ。 江戸の仕事 ─使い尽くす暮らしのために─ http://www.muji.net/lab/living/160420.html 日用雑貨ブランドとして日本の生活を支える無印良品さんの研究所が運用しているブログです。毎回、暮らしをテーマにさまざまな記事を更新していて僕も愛読者の1人です。今回の記事を読み、今から250~500年ほど前の江戸時代の日常を知り、たしかにこのときの日本と今の日本、共通点もあれば相違点もたくさんあるなと思いました。また、この記事とは別に先日読んだ『日本は外国人にどう見られていたか』という書籍の中でも、江戸時代の日本が非常にユニークであったことがさまざまな文献ベースで紹介されていて、改めて江戸時代っておもしろそうだと思ったんです。
庶民に近づいた“江戸時代の”鍋料理
そんなきっかけからいろいろと調べ始めてみたところ、鍋、つつこ。的に大変興味深い情報を知りました。 紀文さんが運営している紀文アカデミーというサイトの1記事です。 鍋料理の歴史と分類 https://www.kibun.co.jp/knowledge/nabe/history/rekishi/ ここでは鍋料理の歴史と分類について学術的に解説しており、その中の“「鍋料理」が確立するまで」という項で「囲炉裏端の鍋から、座敷に七輪や鍋を持ち出して食べるようになったのは、文化が爛熟した江戸時代後期です。”という解説にたどり着きました。 あれ?鍋ってもっと古くから、それこそ縄文・弥生時代の土器を作って日を使うようになったころからのものじゃないの?なんてうろ覚えの知識で疑問を持ったんです(前回の記事で紹介した「なべの歴史」展でも土器の展示が行われていますし)。それ自体は間違っていないようなのですが、この記事によれば“囲炉裏にかける大鍋に対して、食卓に持ちだす鍋料理を「小鍋立て」といいます。「小鍋膳立て」の略で、これが今にいう「鍋料理」です。”とのこと。今のように、台所や調理場から離れて食卓(あるいは食事をする場所)に鍋ごと移してみんなでつついたり、あるいは、お膳からつつくといった、僕たちが今思い浮かべる鍋のスタイルが確立されたのが江戸時代後期なんですね。 さらにこの記事の内容を引用すると、おでんを始め、湯豆腐、鮟鱇鍋など、今もなお人気のある鍋料理の店が生まれたのもこの時代。さらにさらに、江戸時代後期と言うといよいよ鎖国政策に終止符が打たれ、海外との交流が積極的に行われる時代の始まりが近づいたときでもあります。そして、明治時代になると一気に海外文化の流入が行われました。当然食文化にも大きな影響があり、日本ではそれまで禁じられていた「肉食」が行われるようになりました。この動きがまた日本の「鍋」に大きな影響を与えているんです。そう、肉食ができるようになった結果、明治時代以降、牛肉を鍋スタイルで食べる「牛鍋」が流行し、さらに富国強兵の一環として肉食が推進されていったんです。 こうやって1つ1つを紐解いてみると、日本という国単位での転換期がある中、「鍋」という料理もその転換期において影響を受け、鍋の概念は変わらずとも、使う材料、味、形、さらには食べ方やつつき方が変化しているのがわかりますね。 歴史を学び、分化を知る。これもまた学習の楽しみの1つだったりします。 江戸つながりで個人的におすすめしたいのが、横網にある「江戸東京博物館」。ここは、江戸を体現した場所として、さまざまな展示がされている博物館です。昨年2015年3月28日に常設展の大幅リニューアルが行われ、ますます見所満載になりました。
Nabe)に選んだ鍋でもあります。 こんな感じです。どうです?写真からも魅力が伝わりませんか?
ちなみに調理前のインパクトもすごいのですが、鍋の名前自体は調理後、そして、全部つつき終わった後の様子が由来となっています。つつき終わって、鍋に残った出汁スープが夕日のように見えることから「夕日鍋」と付けられました。僕もひさびさにつつきたくなってきた! 🙂時は流れ、鍋は変わる
ちなみに日本と言えば最近は核家族化が進み、鍋の食べ方が変わってきたと言われています。詳しくは以下の記事などもご覧ください。
そんな時代を反映してか、つい先日(4月19日)、東京・表参道に興味深い鍋料理店がオープンしました。 しゃぶしゃぶ山笑ふ http://yama-warau.jp/
お一人様でも気兼ねなく おたのしみください。
このコンセプトのとおり、1人で気軽にしゃぶしゃぶを楽しむことを目指した店です。これもまた時代変化に合わせた鍋の進化とも言えそうですね。実際、ここ1~2年、1人で楽しめる鍋料理店が増えています。ちなみに、僕たち鍋、つつこ。では「コソ鍋」というカテゴリの中で1人鍋もたくさん紹介しているのでよかったら併せてご覧ください(決して鍋をつつく仲間がいないわけではありませんw)。 もちろんこちらの「しゃぶしゃぶ山笑ふ」さんもぜひ訪れてご報告いたしますのでお楽しみに!