鍋の歴史に記録されるであろう「鍋、つつこ。」の第壱鍋は、マタギ鍋です。
担当は、日菜子です。
第壱鍋は、「鍋、つつこ。」発足とほぼ同時に決定しました。馮さんが「こないだ食べたマタギ鍋っていう白菜とキノコの鍋もうまかったよ」という一声と、私も「キノコが食べたいよー、食べたいよー」と欲していたところでした。
マタギ鍋とは?
味噌で味付けし、ネギ、豆腐、大根、山菜、きのこなどをふんだんにいれ、主役の熊肉(主に)を入れる鍋物。
-秋田県観光総合ガイド あきたファンドッとコム「マタギ鍋」
マタギとは、東北・北海道地方で古い方法を用いて集団で狩猟を行う者の集団で、一般的に「クマ獲り猟師」として知られています(Wikipedia参照)。
今回食べたマタギ鍋には、ネギ、豆腐、シメジ、マイタケ、白滝など山の幸がふんだんに使われていて食べると体に染みわたります。野菜はくたくたでおいしく、一方キノコの食感はしっかりしていて、モリモリおいしくいただきました。
そもそも鍋とは何者か
キノコがおいしいマタギ鍋をつつきながら話したテーマは、「そもそも鍋とは一体なんだ?」ということでした。
このテーマを選んだ理由は、楽しく鍋をつつくためには、言葉の定義の確認は非常に大切だからです。この定義をはっきりさせておかないと、のちのち面倒なことになります。
たとえば、私が「鍋」だと認識していたものが、馮さんや大崎さんにとっては「鍋」でないと認識されていた場合。私にとって「鍋」をつついて思い出を作ったつもりが、二人にとっては些末な事象として処理されてしまうでしょう。「あのとき、鍋楽しかったよね!」という思い出話は遠く彼方に。寂しさが募り、ついには「音楽性の不一致による脱退」ならぬ「鍋の不一致による脱退」は不可避です。
また、これを一回一回鍋か否かと討議するのは、話すテーマが山積みされている現状には適していません。
これらの理由により私たちは、鍋を楽しむ権利を存分に行使する品行方正なグループ(?)として、定義づけを行いました。
上下なく、みんなで一緒に食べる
話をしていく中で、「煮炊きをするもの」や、「鍋という器に入っていること」、「炭水化物が具材にあること」などさまざまな条件が出ました。これらあがってきた要素は、定義としては不十分です。なぜなら、たとえばタジン鍋やジンギスカンといった、煮炊きをしない鍋もあるからです。器や具材といった表層的なことよりも、もう少し本質的な「鍋をつつく(食べる)」という行為に焦点を当て、話し合いを進めました。討議の結果、私たち「鍋、つつこ。」では、次の二つの条件を大切にすることにしました(大切にしなくなることもあるかもしれません)。
①食べ物を分け合う、みんなで一緒につつく
鍋を食べる風景を思い浮かべると、まず「みんなでつつく」ということが考えられます。そして、鍋ができる過程を考えてみると、一人一人が獲ってきた食材を一つの器で煮込み、みんなで分け合います。独占はしません。
②重要なことは、丸であること
食べ物を分け合う、一緒につつくという行為を支えているのは鍋の形であると考えます。
みんなと分け合う場合、上下関係を意識してしまうと平等に食材を分配しにくくなってしまいます。少なく分配された者が、食べ物の恨みから大黒柱である父親に下剋上を起こし家庭が殺伐としては困ります。
「円卓の騎士」からも想像できるように、丸というのは対等であることの象徴です。鍋は、食べるという生理的欲求を満たす行為の前ではみな対等であることの表れかもしれません。
突飛なことを言ってしまえば、「みんな対等・みんな平等」が実現されているのは、鍋には共産主義的な要素があるのかもしれません。
討議の余地
・大皿料理は鍋なのか
ここでは②の観点から言えば、大皿料理は丸いお皿で出てくるというイメージがあるため、広義では鍋という扱いでいいのではないかという意見が出ました。ただ、鍋はいっしょくたに具材が入れられ、同じ調理方法で食べますが、大皿料理が同じ状態で食べなければならないことに対して、鍋は各人の好みに合わせて調整が可能ということがポイントです。たとえば、くたくたになった野菜が好きな人としゃきしゃきが好きな人が同席した場合、大皿料理ではどちらかが譲歩しなくてはなりません。しかし、鍋の場合は譲歩は無用です。くたくたが食べたければしばらくできるまで待ち、しゃきしゃきの状態がよければ早めにつついてしまえばよいのです。
・一人鍋の立ち位置
①の点から考えると、一人で鍋を食べることは、「鍋に準じたものを食べている状態」になります。広義でいうと鍋ですが、狭義で言えば鍋らしきものになるのでしょうか。
・and条件か、or条件か
この話し合いでは「鍋」が成立する二つの条件が出ました。上に書いた討議の余地からもわかるように、この二つをand条件にするかor条件にするかで、「鍋」で定義できる範囲は変わります。たとえば、今のところは、広義の鍋はor条件で判断し、狭義の鍋はand条件で判断しているわけです。
そして、今の条件で起こりうる問題は、「ちりとり鍋」のような四角い器を用いる場合です。仮にこの鍋を一人でつついた場合、今回提示した二つの条件を満たさないため「鍋」ではないということになります。でも、そのような場合には「その都度、検討する」ことにしました。もし、検討することが多くなってきたら、それこそが「鍋をつつく」動機付けになるからです。
今後の計画
今後は、討議の余地を残しつつ、みなが納得できる形で鍋の社会的役割について話を進めていくかと思います。テーマは事前に決めてあるものの、フリースタイルになるのが鍋、つつこ。なので、どうなるかはわかりません(ちなみに今回事前に練ったテーマは、「郷土という概念について」というものでした。が、まったく取り上げられませんでした)。
それぞれがおいしく鍋を食べながら、鍋と社会の知見を深めることにしばらく努めます。
みんなで楽しく、鍋、つつこ。
■今回つついた鍋
種類: | マタギ鍋 |
店名: | 秋田川反漁屋酒場 銀座店 |
URL: | http://r.gnavi.co.jp/ga5x122/ |